僕には忘れられない大事なものがある。リポビタンDだ。どうしてそんな物が、と不思議に思うかもしれない。でもこれには大きな理由があるのだ。僕がまだ学校に通っていた頃、中学から高校ぐらいの時、僕は祖父と一緒に住んでいた。その祖父がよく僕にくれたもの、それがリポビタンDなのだ。僕が外で嫌なことがあって、暗い気持ちで家に帰ると、そんな僕の気持ちを悟ったように祖父が僕にリポビタンDをくれた。
―――ファイトだぞ、正平
祖父は必ずそう言って、にんまりと笑った。僕はその笑顔を見るだけでまだ飲んでもいないのに元気になった気がした。
そんな祖父が去年亡くなった。癌だった。さすがのリポビタンDも癌には勝てなかったのねと母が少し涙を見せながら笑っていた。
祖父の仏壇にはもちろんリポビタンDが置かれている。それを見るたびに僕は思うのだ。
じいちゃんは天国でもあの笑顔でいるに違いないと。